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「環境」への視点

 平成20年8月4日の中日新聞朝刊「環境と暮らし」面に「カブト・クワガタ捕り アラ技・ウラ技」というタイトルの記事が掲載されていた。重村敦氏の署名記事であった。見出しに「樹液出す木をキック」とある。
見出しの「木をキック」にも違和感を覚えたが、読み進む内に不快感が募ってきた。記事の要旨はカブトムシ・クワガタの採集方法であり、スーパーなどで買うよりも自分で捕まえる事を勧めるものである。

 具体的な採集のコツが記述されているあたりに不快感の原因がある。
「クヌギやコナラなどの幹を『けって』」「木に振動を与える要領で『けるといい』」「幹を『けったり』」と、「ける」が三カ所もでてくる。「木をける」事を強調しすぎである。
大木は多少蹴ったところでびくともせず虫も落ちてこない。蹴飛ばして虫が落ちてくるのは比較的細いクヌギやコナラである。
 樹木を保護・手入れする際、誰が蹴飛ばすだろう。根を踏む事ですら木にダメージを与えるのは常識である。蹴ったり叩いたりする事が樹木に全くダメージを与えないとでも考えているとすれば、幼稚という他ない。

 実は、当所は名古屋の市街地にある神社の境内である。市街地では貴重となった森が残り、ナラ類なども多数生育している。夏休みには毎日沢山の子供たちがカブトムシを捕りにやってくる。
その子供たちが入れ替わり立ち替わり、毎日のように同じ木を蹴飛ばしたらどうなるだろう。蹴って良いのなら、棒切れやハンマーなどで叩いても良いと考えないだろうか。他にも、樹木にダメージを与えてムシを捕るような方法も昔からあったが、それが勧められる事でないのは当然である。「環境と暮らし」面にこのような記事が掲載されるとは何という皮肉であろう。「幼稚」と述べた所以である。

 神社には未だ多くの森が残っている。神の「森(杜)」こそが神社だからである。市街地の森を維持して行くのは大変な困難が伴う。苦労して森を守っている立場からは本当に悲しい記事である。「キック」以外に、ムシを捕る方法は沢山ある。
 現に「アラ技」であるとの確信もお持ちのようである。子供たちにはバランスの取れた自然への意識をもってもらいたい。「環境」面に、視野の広い「環境」への視点を望む理由である。
(宮司からの託け)

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